FC2ブログ

KAD製リアサスペンションブラケットの剛性について観察

 2月16日の記事で、第1回トラックディで走行したときのインプレとして「右ターンで左後輪のグリップ感が乏しくて怖くてしょうがない」と書いたところ、monroe walkさんから「KAD製ネガキャンブラケットのリアサスペンションアーム支点の支持剛性が低いのが原因ではないか?」とご指摘頂きました(こちら)。

 サスペンションアームの支点がそこまで動くものなのかどうか判断が付かなくて近日確認しようと思っていたのですが、コロナ禍の影響で走行のキャンセルが続いてしまって先延ばしになり、9月6日の第3回トラックディでようやく確認のチャンスがやってきました。

IMG_0030m.jpg

確認の方法は極めて原始的です。エンジニアとしてはお馴染みの「その場観察」ってヤツです。手っ取り早くて確実ですよねw



 走行動画と同期させてピクチャーインピクチャーで示してみました。

 筑波サーキットで左リアサスペンションに負荷が掛かる場所といえば1コーナー、ダンロップ下、第2ヘアピン、そして最終コーナーかと思います。今回たった5周しか出来ませんでしたし(汗)、その中でもそれなりに気合いを入れて走ったのは1.5周程度しかないんですが(大汗)、その中ではリアサスペンションアームの支点の動きは観察できませんでした(画面全体が微妙に上下に揺れてますが、それはカメラの揺れに依るものです)。

 また今回走ってみたインプレですが、2月に走ったときほど不安を感じませんでした。コーナーウェイト調整(こちら)をしたので4輪の接地バランスが改善した効果ではないかと考えております。・・・前走車を追いかけていたのでアドレナリンで恐怖感が麻痺していたのもあるかもしれませんがw

 ターンインして後輪に荷重が乗る際の動きが赤ミニと比べて唐突というか早いというか腰砕けな感じはあるのですが、それはおそらくボディ剛性が上がったためにロールの動きの全てがリアサスペンションに集中した結果としてダンパーの容量が不足してしまったためと考えています。赤ミニの時はボディがよれて変位吸収していたので今のダンパーでちょうど良かったのですが、ボディを固めた結果として全ての変位がサスペンションに集中した結果、サスペンションの変位量と変位速度が増してダンパー容量が不足、ではないかと。

 関係ないですけど普段足に使っている現行型プリウスもそんな感じなんですよね。新型になってボディはしっかりしているのに交差点でのロールは不安定で、街乗りの速度域ではリア外輪に荷重を維持したままターンが出来ないんですよ。リア外輪に荷重を維持しようとしたら恐ろしいスピードでターンする必要があります。新しい設計でボディ剛性は素晴らしく上がっているのにダンパーをケチったんじゃないかなーと想像しています。
 プリウスについては対処することはないですがw、緑ミニについてはダンパーの容量アップをしてみたいですね。
 
 話を戻します。KAD製のネガキャンブラケットの支持剛性は少なくともうちの個体については問題ないという結論になりました。製品の個体差があるのかまでは分かりませんが、もし不安があるならば今回のようなやり方で確認するか、monroe walkさんのようなやり方で軸を積極的に固定して対策するのがオススメです。実際かなり魅力的な方法で、より確実かつ積極的に支持剛性を確保するという観点でマネしてみたいと思いました。



にほんブログ村 車ブログ MINI(ミニ)へ
にほんブログ村

日本ブログ村のMiniカテゴリーでランキング参加してますので、上のバナーをクリックお願いいたします。Mini関係のBlogが満載ですのでリンクとしてもご利用下さい。

にほんブログ村 車ブログ 旧車・絶版車へ
にほんブログ村

こちらは旧車カテゴリーです。こちらもコアな記事が満載ですのでご覧下さい。

テーマ : 英国車ミニへの想い
ジャンル : 車・バイク

コーナーウェイト調整

3/1のSBoM第1戦に向けて緑ミニを整備しております。

もちろんP師が、ですがw いつもありがとうございます。
ちなみに本日はP師ご夫妻の結婚記念日だそうで、めでたい日にあやかって良い結果に繋がることを期待しております。・・・早く帰宅するために手を抜いたりしてませんよね?←

今回はSBoMのお仲間のヨシヨシさんに教えて頂いたコーナーウェイト測定と調整にチャレンジしてみました。

コーナーウェイトというのは4輪それぞれの接地荷重のことです。例えば左前輪の車高が高くなっていれば左前輪の荷重が抜けて右前輪により大きな荷重が乗ってしまい、左右の荷重に差が出来てしまいます。そうするとハードブレーキ時に右にステアリングを取られたり、右ターンと左ターンでグリップ限界が違ってしまったりといった症状が出たりします。車高調整は一般的には地面からのボディの高さを測定して左右合わせますが、コーナーウェイトの方がより敏感に差が出るので、よりシビアな領域を攻めるドライバーは地面からの高さではなく接地荷重で車高を調整するわけです。

僕自身がコーナーウェイトの概念を初めて知ったのはWRCのカルロス・サインツの記事を読んだときです。彼はサスペンションセッティングにかなりこだわりを持っていたようで、サービス毎にセリカのコーナーウェイトを調整していたのだとか・・・ラリーのサービステントの中に定盤を用意するだけでも大変な手間だったと思うんですよね、ラテン系なのに細かい奴っちゃなと当時学生だった僕は思ったものですがw、その30年後にようやく自分の車に応用することになりましたw

コーナーウェイトを見ておこうと思った理由は、前回のトラックディでヘアピンとか最終コーナーでリアに荷重を乗せられないというか怖くて仕方がなく、コーナーウェイトが狂っているのではないか、と予想を立てたためです。ええ、自分の腕とか恐怖心はとりあえず棚に上げておいて、まずはハードから見直してみようってことですねw

これまでの赤ミニならば、ボディが錆びて程よくヨレていたので多少車高が違っていてもシャシーが捻れて吸収してくれていたと思うんですよね。そんなわけでコーナーウェイトなんて考えたことも無かったのですがw、FIAボディになってシャシーの剛性が増したのでストロークの短いラバコンとの組み合わせでは影響が大きいのではないかと思い、試してみることにしました。

87500883m.jpg

こんな感じでセットアップして頂きました。

専用のコーナーウェイト計はかなり高価ですので、デジタルの台秤を4台購入して並べてます。測定する前には秤自体の高さがそろっているかも確認しました。ここがズレていたら全て狂ってしまいますからねw

87637256m.jpg

緑ミニをセット。

念のためダンパーとスタビのリンクも外した状態で測定&調整しております。

87666097m.jpg

これは調整後ですね。左前輪が197.05kg。

88152986m.jpg

右前輪が197.85kg。

87500245m.jpg

左後輪が111.15kg。

87685672m.jpg

右後輪が113.40kg。

コーナーウェイト調整

調整前後をグラフで比較するとこんな感じです。

調整前は右前輪と左後輪に荷重が乗っていて、左前輪と右後輪の荷重が抜けた状態だったということになります。車体に対して斜めに荷重が立っていたのでアンバランスであったことは確かなのですが、この程度ならば十分普通に運転できる状態のような気もします。やはり自分の恐怖心故に攻めきれなかっただけなんでしょうかw

88091784m.jpg

なんとなくビシッとした気がする後ろ姿w
とにかく心配の種はつぶしたので、週末のレースでは頑張って攻め込んでみますw

前回の記事でリアのネガキャンブラケットの剛性不足ではないかとのご指摘を頂いてまして、それについては現地で検証してみたいと思ってます。


にほんブログ村 車ブログ MINI(ミニ)へ
にほんブログ村

日本ブログ村のMiniカテゴリーでランキング参加してますので、上のバナーをクリックお願いいたします。Mini関係のBlogが満載ですのでリンクとしてもご利用下さい。

にほんブログ村 車ブログ 旧車・絶版車へ
にほんブログ村

こちらは旧車カテゴリーです。こちらもコアな記事が満載ですのでご覧下さい。

テーマ : 英国車ミニへの想い
ジャンル : 車・バイク

コンピューター変更

 ご無沙汰しております。

 来週2/11に第1回トラックディがありまして、そこから2020年シーズンが始まります。昨年は一度もまともに走れないという辛いシーズンでしたが、心機一転頑張ろうと思っておりまして、その第一歩となります。気合いを入れねばなりません・・・、が、身も心も平和ボケしてしまっってますので実戦に向けたリハビリが大変だなあと覚悟しております。

IMG_4635m.jpg

 エンジン本体は昨年の夏頃に仕様変更を終えてまして、1,440ccの5ポートヘッドから1,380ccの8ポートに変更しております。

 ロングストロークのクランクシャフトを活かしてそのまま1,460ccというのも考えたのですが、ロングストローク仕様はメカニカルなロスが大きいという懸念があり(こちら)、その心配の少ない1,380ccでまずはとことんやり尽くそうと考えました。クランクシャフト、コンロッド、ピストンをフルセット買い直す必要があり、財布へのダメージは甚大でしたがw

IMG_4637m.jpg

 もともとスッキリしていたエンジンルームですが、8ポートヘッド仕様にしたことで更にスッキリしました。

20200202_03.jpg

 夏以降、エンジン本体以外での仕様変更はこちら↑。

 今シーズンからコンピューターを変更します。Haltec社のElite550というタイプのフルコンです(こちら)。しばらくはフロアに転がっていたのですが、最近ようやく助手席のダッシュボード下に安置されたようですw

 これまでSpecialist Components社製のTyphoonを使ってきましたが、実は昨年年初に壊れました。失火しがちでコイル交換などを試みてはいたのですが、最終的にはコンピューターの点火コイルへの出力部分の基板が焼けて機能停止しました。
 まあ英国製ですからそういうトラブルもあるよねということでコンピューター本体を買い直したのですが、そのロットから新しいバージョンの制御ソフトしか対応しなくなってまして、しかもその制御ソフトが通信エラーでデータがセーブできないというバグを持っていてまともに動かせなかったんですよ。セットアップの努力が無駄に消えるのを何回か繰り返して耐えられなくなり(P師が)、またSVの他の車両でもレース中に基盤が焼けるというトラブルに見舞われて凹んだこともあって(P師が)、この機会に他社製に乗り換えることにしました。

 Haltecを選んだ理由ですが、国産車のチューニングに用いられることが多く、SVアドバイザーの大川さんも多くの車でHaltecを使ってセットアップしてきたという実績があるとのことで、蓄積されたノウハウを決め手にしてこれを選びました。SCで苦労したことを考えると「信頼性が高い」と言い切れると安心なのですが、トラブルの情報は見つからなかったことから信頼性はそれなりに高いと期待しています。

20200202_02.jpg

 Haltecはオーストラリアの会社で、日本ではチューニング大手の東名パワードが代理店になってます。が、東名パワード自体はセットアップノウハウの開示を殆どしていないようでw、その他の心あるショップが頑張っているのが現状のようです(こちら)。

Elite550の特徴の中から気になる部分を抜粋しますと、

・Haltecの中では4気筒用のエントリーモデルの位置づけ。ただし4気筒に対してシーケンシャル噴射および点火制御が可能など相当に高機能。

・防水仕様!w コンピューターの売りとして防水ってどうなのよと思わないこともないですが、ミニにとっては極めて重要です。

・3気圧までの圧力センサーを内蔵。大気圧補正が可能なので、富士スピードウェイや雨天時の補正などで重宝しそう。

等々、面白そうです。

20200202_01.jpg

 個人で趣味で使う分には面白そうで済むのですが、お店がレースで使えるレベルまで使いこなすにはかなり大変な作業になり、P師の決断には頭が下がります。幸か不幸か昨年後半は私自身のレース活動がストップしてましたので、その時間を使って緑ミニで使い方含めてノウハウを蓄積して頂きました。今年のレース活動が実戦での検証になります。

気合いを入れていきますw


にほんブログ村 車ブログ MINI(ミニ)へ
にほんブログ村

日本ブログ村のMiniカテゴリーでランキング参加してますので、上のバナーをクリックお願いいたします。Mini関係のBlogが満載ですのでリンクとしてもご利用下さい。

にほんブログ村 車ブログ 旧車・絶版車へ
にほんブログ村

こちらは旧車カテゴリーです。こちらもコアな記事が満載ですのでご覧下さい。

テーマ : 英国車ミニへの想い
ジャンル : 車・バイク

エンジン不調の原因と対策 その3

エンジン不調の苦悩編その3、トラブル紹介、パワーが出ない原因の解析と続いて、今回は今後のエンジン仕様についてご紹介です。

スライド4

先回ご紹介した排気量と最高速との関係の図です。

緑のプロットがミニ1000クラス、橙色のプロットがインジェクションクラス、赤および黒のプロットがSBoM、モトおよびシルエットクラスで、黒色のプロットがロングストローク仕様、白抜きのプロットがマルチポート仕様です。

スライド9

グラフの縦軸を最高速から出力に換算してます。
出力を馬力で書くと生々しすぎるのでw、MRRC70号車を基準(1.0)として相対的に示しました。

スライド10

更に、縦軸の出力を排気量で規格化して排気量あたりの出力としました。
一つ前のグラフと同じくMRRC70号車を基準にして相対的に示してます。

今は亡き赤ミニ・・・相当にイケていたことがよく分かります(涙)。そして緑ミニは相当イケてないですね(号泣)。

スライド11

各仕様の群の中で一番上に来るプロットが、それぞれの仕様の中で最も効率よくパワーを出している車と言うことになるわけですが、マルチポート仕様では赤ミニ、そして5ポート仕様ではMRRC70号車になります。

うん、我らがP師、頑張ってますね。

奇をてらったことは一切せず基本に忠実に・・・、段差を徹底的に取り除いてスムージングした吸排気系、表面を研磨して軽量化および重量合わせしたムービングパーツ、最適化された各パーツのクリアランス、そしてそれらを丁寧に組む基本技術、というあたり前の作業の積み重ねでしかないのですが、例えオーナーが気づかなくても物理の神さまはちゃんと見ていて結果に反映してくれてます。数字は嘘をつかないですからね。

こんな真面目なメカニックが味方になってくれていて本当に幸せですよ、まあ、緑ミニではちょっとやらかしてくれましたがw・・・悪い結果も一つの糧としましょう。

スライド13

排気量あたりの出力のグラフでベストな効率のラインが分かりましたので、そのラインをそのまま換算して縦軸速度のグラフに戻すとこんな感じのラインになります。

各排気量で、5ポートおよびマルチポートのそれぞれで最高速をここまでは伸ばすことが出来得るという目標線ですね。
例えば1,380ccで5ポートならば156km/hr、マルチポートならば164km/hrになります。1,460ccではマルチポートならば169km/hrですが、5ポートだとこのラインよりも下に限界が来る見込みです。理由は先回ご紹介した通りで、ロングストロークに5ポートヘッドの組み合わせでは吸気ポートがボトルネックになりトルクが低下するためです。

スライド12

緑ミニを改良するとして、現状のロングストローク仕様のまま手を打つならば、ノーマルハイトのピストンを使って5ポートのまま160km/hr弱を目指すという(A)のアプローチか、そこから更にマルチポート化して169km/hrを目指す(B)のアプローチが選べます。

もう一つの選択肢としては、ミニ1000時代に身につけたノウハウを活かしてマルチポートのまま排気量アップするという(C)のアプローチというか考え方もあります。

どうするか悩んだのですが、今回1,440ccチューニングを無防備に進めて痛い目に遭ったこともあり、これまでの経験を活かせる(C)のアプローチで進めることにしようと思います。

排気量は1,380ccで行きます。

MRRC70号車で基本的な実績と経験があるのが一つの大きな理由です。
また、ロングストローク仕様では仮にノーマルハイトピストンを使ったとしてもある程度のピストンの首振りとその結果としての寿命低下は避けられない気がしてまして、それを避けつつロバストな構成で余裕のある状態で効率アップしていきたいという思いがあり、ノーマルストロークのクランクシャフトを用いた1,380ccを選びました。

IMG_7495m.jpg

SVにて。32FESに向けて突貫で作業が進められてます。

例のスタンドが活躍している模様w

IMG_7497m.jpg

既にエンジンは組み上がって搭載まで完了。

えっと、組む途中の写真がもらえてないのですが・・・P師忙しそうだし無理言えませんね。

IMG_7499m.jpg

FIAボディに電子制御のマルチポート・・・いや〜邪道ですねw 
全くもって素晴らしい。自分とSVらしくて気に入ってます。

正道のFIA仕様といえば12Fブロックを用いた1,293ccとなりますが、それはもう少し先、老後の楽しみに取っておきます。


にほんブログ村 車ブログ MINI(ミニ)へ
にほんブログ村

日本ブログ村のMiniカテゴリーでランキング参加してますので、上のバナーをクリックお願いいたします。Mini関係のBlogが満載ですのでリンクとしてもご利用下さい。

にほんブログ村 車ブログ 旧車・絶版車へ
にほんブログ村

こちらは旧車カテゴリーです。こちらもコアな記事が満載ですのでご覧下さい。

テーマ : 英国車ミニへの想い
ジャンル : 車・バイク

エンジン不調の原因と対策 その2

エンジン不調の苦悩編、続きです。前回は起きたトラブル順に紹介しましたが、今回はもう少し俯瞰して眺めてみます。

最初にちょっと振り返りになりますが。

赤ミニでは1,000ccエンジンでロスをギリギリまで削って出力アップを重ねてきました。それはそれで楽しかったのですが、それでも排気量の差には勝てないという思いがありました。特にTBCCのように排気量の異なる車両で混走するような場合は厳しくて、どうしても無理してしまってクラッシュまで至ってしまったという反省があります。

そんな背景から、緑ミニのエンジン仕様を決める際に第一に考えたのはエンジンの排気量アップでした。その他は平均的な仕様でそこそこ楽に走れる状態をまずは作って、そこから段階的にロスを削っていこう、というチューニングシナリオを考えておりました。

エンジン仕様は、86mmロングストローク+73mmピストンの組み合わせで排気量1,440cc、ヘッドは一般的な5ポートながら効率を優先してビッグバルブのオフセット仕様とし、カムシャフトはレースで実績があるとされるパイパーの649を選びました。

排気量なりに期待したトルクは14kg・mで、そこから想定できる最高出力としては140PS程度、悪くても130PS台後半を期待していたのですが、シャシダイで測定した結果はトルクが13.1kg・m、最高出力が117PSという期待をかなり下回る値でした。筑波のバックストレートでの最高速は107PSだった赤ミニを下回る結果でしたので、実際には100PSそこそこしか出ていないのが現実かと思います。

そもそも楽するために排気量アップしたはずなのに、なぜこんなにパワーが出ないのか?

まずは緑ミニの現状の立ち位置を明確にしてみました。

スライド1

2019年度SBoM第2戦のリザルトから、参戦している全車両の排気量とバックストレートでの最高速度を抽出してプロットしました。横軸が排気量、縦軸が最高速度です。緑のプロットがミニ1000クラス、橙色のプロットがインジェクションクラス、赤いプロットがSBoM、モトおよびシルエットクラスです。

全体を眺めると右肩上がりで、排気量が上がるに従って最高速が高くなるという傾向が現れてます。「排気量に勝るチューニング無し」は全体の傾向としてその通りになってます。

その他の特徴としては、インジェクションクラスは右肩上がりの傾向の中にはあるものの最高速度は他のクラスに比べて全体的に低めで、インジェクションエンジンが出力を出しにくい現状がデータとして見て取れます。

スライド2

ロングストローク仕様の車を黒で区別してみました。

一番右側の、大排気量の一群になります。

スライド3

更に、マルチポートの車を白抜きのプロットで区別してみました。

多少のバラツキはありますが各群の上位はマルチポート車であり、出力を出すにはマルチポート化は有利であることが分かります。

スライド4

で、緑ミニはココです。右端の群の一番下、ロングストローク車の中のビリっけつですよ(涙)。

対策するのに先んじてまず必要なのは冷徹かつ定量的な現状把握ですので、血の涙を流しながらグラフを眺めております。

ちなみに今は亡き赤ミニをプロットすると左上の位置に来ます。今思うとずいぶん優秀な子でした。クラス最強はもとより、今の緑ミニよりも上に居ます。

スライド5

5ポート仕様である緑ミニの解析をまずはしたいので、マルチポート車を削除して5ポート車だけにしてみました。

各群でもちろん上下にバラツキはあるのですが、各群の上端のプロット、つまり最高速度が高い車両に注目すると、おおよそ直線上に乗ってきます。ミニ1000クラスにこの傾向に乗らない車両がありますが、おそらく開示されている情報が違っているのではないかと想像してます。おそらく1300用のピストンと組合わせて1,200ccあたりの排気量になっているのではないかと。

話を戻しますが、この最高速が高い車両をつなぐラインは「現状で実現可能な最も高い最高速」のラインとなります。当然ロングストローク車の群もこのラインに届いて欲しいのですが、届いてないんですよね。ちょっと低めの所に固まってます。言い換えると、排気量なりに速くなって欲しいのに、速くなりきれてません。

たまたまこのレースで速い車両が居なかったのでしょうか? 
僕はそうは思えないのです。有り体に言うとロングストローク化で排気量アップした場合のトルクとその結果としてのパワーの伸び代は実は少ないのではないかと疑ってます。

スライド6

そんな疑いを検証するために手持ちのデータで解析してみました。上の図は緑ミニのパワーチェック結果です。

最大トルク13.1kg・m、最高出力117PSとなってますが、納得いかないんですよね〜・・・ではなくて。
パワーチェックのチャートは出力だけでなく他にも色々なデータが現れてます。

パワーチェックの手順としては4速までシフトアップし、低回転から8000rpmまでアクセル全開で加速させるわけですが、その過程で測定されるのが「計測出力」で、これがタイヤから路面に伝わる実際の出力になります。
また、8,000rpmまで加速した後でアクセル全閉で回転が落ちてくる過程も出力(この場合は抵抗)を測ってまして、このマイナス側の出力が「損失出力」で、エンジン内部から駆動系までのメカニカルな抵抗による出力ロスを表してます。
ここで「計測出力」に「損失出力」を足した値が「補正出力」で、エンジンが発生した出力を表し、補正出力を回転数で割って求めたのがトルクです。

今回は、チャートの中の「最大トルク」と「6,000rpmでの出力損失」に着目してデータを集めてみました。

僕自身は残念ながら1,000cc以外のチューニングデータはほとんど持ってませんので、排気量違いのパワー特性をネットで漁って集めました。猟場は主に某所沢秘密基地の工場長ブログです。

スライド7

チューニングの結果を議論する場合は、一般的には「補正出力」の中の最大出力に注目するのですが、最大出力はカムやヘッドの仕様で大きく変わるので横並びの比較がしにくいです。そこで今回は「最大トルク」に注目しました。

トルク特性もカムやヘッドの特性に影響を受けるのですが、最大トルクだけは、いわゆる「最高効率点」なので他の仕様の影響を受けにくく、極論すると適切な圧縮圧力にさえなっていれば排気量なりの値になります。経験的にはNAエンジンならば排気量1,000ccあたり10kg・m程度の値に落ち着きます。

某所沢秘密基地のブログを9年間分見直して←、圧縮圧力まで調整したと思えるデータを8点(5ポート車6点およびマルチポート車2点)抽出し、排気量に対して最大トルクをプロットしたのが左上の図になります。

限られたデータの中での解析となりますが、まずは5ポート車のプロット(青丸)に注目すると、おおよそ1,300ccまでは「排気量1,000ccあたり10kg・m」の直線に乗っているのですが、1,300ccを超えたあたりから寝てきてしまってます。

この挙動は、排気量の拡大に対してヘッド(おそらく吸気ポート)がボトルネックになってしまって、1,300ccを超えたあたりから十分に吸気しきれなくなり、圧縮圧力が上がらずトルクが低下しているのではないかと推測しています。高回転のために吸気時間が短くなる出力点ではなく、4,000〜6,000rpmの最大トルク点ですらボトルネックになってしまっていることから、排気量に対して吸気のキャパが根本的に足りなくなっているように思います。

この考察を裏付ける傍証ですが、マルチポート化するとこのトルクが寝てくる傾向は解消されます(白抜きの青丸)。ヘッドのポートがボトルネックになっている証拠ではないかと思いますし、ヘッドのボトルネックが大きくなる大排気量でこそマルチポート化の効果は大きいとも言えるかと思います。

1,300cc以上の排気量では吸気のボトルネックからトルクが低下することを説明しましたが、その一方で緑ミニの最大トルクはこの議論だけでは説明できないほど下に居ます。何か他にもロスに繋がる要因があることになります。
それを確認するための一つの指標として損失出力にも着目してまとめてみました。それが右上のグラフになります。

損失抵抗は排気量との相関はなさそうで、10kg・mあたりを中心に±4kg・m程度の範囲で分散しています。

緑ミニの損失出力は・・・、確かにこの中では最大ではありますが(汗)、それでも他に比べて圧倒的に大きいことはなく、出力の低さを説明しきれるほどではありません。とは言え、損失出力を緑ミニの14PSに対して7PSまで下げた車もありますから、エンジンの組み様によっては損失低減で7PS取り返せることを示しているわけで、チューニングする上で無視できない寄与ではあります。

スライド8

ここまでをまとめるとこんな感じになります。

トルク直線から低下した分の内訳として、「ヘッドのボトルネック」起因の低下と、それだけで説明できない「緑ミニ固有のロス」がある、と。

データから追えるのはこれが限界ですので、ここから先は現物を見て確認していきます。

IMG_7209m.jpg

レース4戦後にバラした際のエンジンの状態です。

ドレンの鉄粉は少々。

IMG_7259m.jpg

フライホイールのバランスが取れていないのではないかという懸念があったのですが、フライホイール、クランクシャフト共にバランスは問題なく、クランクの曲がりもありませんでした。

その結果でもあるのですが、最も負荷が掛かるリア側のメインジャーナルでもメタルの状態に問題なし。

IMG_7260m.jpg

センターも問題なし。

IMG_7261m.jpg

フロント側も問題なし。

というわけで、回転系のダイナミックバランスが取れていなかったという説は完全に棄却できました。

IMG_7220m.jpg

ピストンです。Supertech製のショートハイトピストンですが、

IMG_7221m.jpg

スカートが傷だらけになってます。特にスカートの端の部分は囓って斜めに削れてしまってます。

IMG_7255m.jpg

シリンダー側です。

光が反射してよく分かりませんが(汗)、クリアランスは10/100まで広がってしまってました。下道走行含めて走行距離は400km程度ですが、4回のレースではいずれも予選リタイヤしてますので全開にする機会はそれほど多くなかったにもかかわらずクリアランスの許容値を既に超えてしまいました。

シリンダーのどの部分が最もクリアランスが広がっているかをP師に探って頂いたところ、ブロック上端から45〜50mm下の車両前後側という結果になりました。

この位置は上死点にいるピストンのちょうどスカートの下端に相当する位置になります。この結果から、爆発行程でピストンが下がり始める時にまずピストンが傾いてシリンダーウォールに齧り付き、その状態で爆発圧を受けて下がるためにこの部分を削ったと推測します。一方、他の行程ではこの位置にピストンがあるときにはスピードがほとんどゼロですので削れないはずで、その理由からも爆発行程に絞り込めます。

いわゆる「ピストンの首振り」という現象です。ただし、一般的にはピストンの首振りは吸気、圧縮、排気といったクランクシャフトからの力でピストンが引きずり回される行程で激しくなり、爆発行程で爆発圧がピストントップに均等に掛かる状態ならばそれほど酷くはならないと聞いた覚えがあります。にもかかわらず、緑ミニの場合は一般的に影響が少ないはずの爆発行程ですら首を振ってシリンダーをゴリゴリ削っていたわけです。
変更点としてはロングストロークのクランクシャフトとショートハイトピストンとの組み合わせしかなく、これが主要因であることは間違いなさそうです。

この仮説に基づいて各症状を考えると、
・爆発行程での首振りが酷いことから、その他の行程での首振りも相当に酷いはず。従って緑ミニの大きめの損失出力もこの仮説に合致。
・爆発行程での首振りによるロスそのものは計測出力の低下に現れるが、緑ミニの低い計測出力もこの仮説に合致。
・爆発行程での首振りは、負荷が高い状態でアクセル全開にするような状況で顕著になるはずなので、せいぜい2速までしか使わない成田では問題なくて3速4速で高回転まで回す筑波で影響が顕在化したのもこの仮説に合致。

あとは、このピストンの首振りが原因でタイミングベルト外れにつながるようなクランクシャフトの振動が発生するかですが・・・、爆発行程毎にピストンがゴリゴリ削れている状態ではクランクシャフトに伝わる爆発力の変動も複雑なものになるはずで、それが異常なトルク変動に繋がった・・・のかなあ、という想像しか出来ません。まあこれは今後の対策エンジンで確認するしかないかなと思ってます。

エンジンチューニングの世界では、レスポンス向上を狙ったピストンのショートハイト化は普通に行われるアイテムになってますが、ショートハイト化による首振りを防ぐためにはクリアランスを詰める等の手当が必要です。
ところがミニのエンジンは、捻れの影響を受けやすい3ベアリングのクランクシャフトだったり、またピストンからクランクシャフトへの入力がブレそうなオフセットボーリングのブロックだったりすることから、現代のエンジンよりも大きめのピストンクリアランスが必要とされてます。
そのピストンクリアランスを詰めるのは焼き付きのリスクが伴うため、この道を進むには相当に慎重になる必要があります。ピストンの膨張特性を考慮しながらクリアランスの限界を見極めて、できればスカート部分に囓り防止のコーティングも加えて・・・でしょうか。何となくそういうアプローチで上手く使いこなしている人に心当たりがあるのですが・・・、具体的にはロングストローク仕様のマルチポート車で全車両中最高のトップスピードを出している人とかw

関連して思い当たる情報もいくつかありまして。

オメガのミニ用ピストンって73.5mmに関しては鋳造がラインナップのメインで鍛造ピストンがほとんど無いんですが、首振りによるパワーロスを防ぐためには寸法変化の少ない鋳造ピストンでクリアランス狭めを狙うべき・・・という先人達からのメッセージだったのかな、とか。

マルチウェブのクランクシャフトは出力が出にくいという噂を聞いたことがありますが、これも原因はクランクシャフト本体ではなくてキットに含まれているショートハイトピストンが原因だったのかな、とか。

某秘密基地のN村店長もロングストロークにショートハイトピストンを組み合わせてるように見受けられるのですが、N村店長もレースでは苦労してるよな、とか。

思うところをいろいろ書きましたが、結論は「ロングストローククランクとショートハイトピストンの組み合わせはリスク大で、少なくとも簡単にはいかない。やめておいたほうが方がむしろ無難」でしょうか。


今後のエンジンの構想と仕様についての詳細は次回に続きます。


にほんブログ村 車ブログ MINI(ミニ)へ
にほんブログ村

日本ブログ村のMiniカテゴリーでランキング参加してますので、上のバナーをクリックお願いいたします。Mini関係のBlogが満載ですのでリンクとしてもご利用下さい。

にほんブログ村 車ブログ 旧車・絶版車へ
にほんブログ村

こちらは旧車カテゴリーです。こちらもコアな記事が満載ですのでご覧下さい。

テーマ : 英国車ミニへの想い
ジャンル : 車・バイク

プロフィール

みくた

Author:みくた
運動神経のなさを経験値でカバーしようと企むAround 40です。
これまでランエボでのサーキット走行にハマり、最近はClassic MINIに惚れ込んでます。Mini1000、1300キャブクーパーとおんぼろミニを乗り継いで、Austin Mini Mk1 に辿り着きました。レストア、トラブル対策とのんびりドライブを楽しんでます。
よろしくお願いします。

にほんブログ村 車ブログ MINI(ミニ)へ
にほんブログ村

日本ブログ村のMiniカテゴリーでランキング参加してますので、上のバナーをクリックお願いいたします。
Mini関係のBlogが満載ですのでリンクとしてもご利用下さい。

にほんブログ村 車ブログ 旧車・絶版車へ
にほんブログ村

こちらは旧車カテゴリーです。

最新記事
月別アーカイブ
カテゴリ
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

最新コメント
最新トラックバック
FC2カウンター
ブログ村 新着記事
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR